書評

【書評】芥川龍之介の「蜘蛛の糸」〜自分だけ助かろうとするなんて〜

芥川龍之介「蜘蛛の糸」の書評〜自分だけ助かろうとするなんて〜

あなたは「自分さえ良ければいい」と考えることはありませんか?

そのように聞かれたら、多くの人は「そんなことはない」と答えるでしょう。
おそらく普段の生活においては、他者のことを思いやり「誰かの為に」生きることができるはずです。
では、震災や自然災害のような「いつもと違う」状態ではどうでしょうか?
命の危機や、パニックになった時は?

「自分だけでも助かりたい」「自分が助かってから人を助ける」
そう考える人が多いのではないですか?

犯罪を犯した人を「悪人」と呼びます。
自分の欲得の為に他者よりも「自分」を優先し、独り善がりの行動を起こしたからこそ、「悪人」となったのです。

全ては「自分さえ良ければいい」という考えのもとに。

受験・出世・部活動のレギュラー争い・・・人生にはあらゆる競争が付き物です。
生きること即ち競争なのかもしれません。
人はごく僅かな可能性の為に多くの人を出し抜いて、自分が一番になろうとする生き物です。
そんな中で「自分さえ良ければいい」という考え、あなたも出ているのではないですか?

今回はそんな「自分さえ良ければいい」という考えをテーマにした小説、「蜘蛛の糸」を紹介します。

蜘蛛の糸はこのような人におすすめ
芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」ですが、このような人におすすめします。

●初めて純文学に触れる人
●初めての純文学だけど、長編はちょっと・・な人
●短編小説が好きな人
●わかりやすい小説が好きな人
●芥川龍之介い興味を持った人

上記に当てはまる人はぜひ読んで頂きたい小説です。

芥川龍之介の生涯と芥川賞

この作品の作者は「芥川龍之介」です。
国語の教科書で彼の作品を一度は目にした方も多いかもしれません。
具体的に作品を読んだことのない人でも「芥川賞」と言う言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?

芥川龍之介は大正時代に活躍した日本の小説家です。
「羅生門」「鼻」「芋粥」「藪の中」など、多くの優れた短編小説を生み出した「短編の名手」とも言われています。

作品の特徴として、「エゴイズム」「醜さ」といった人の「内面」を短編の中であざやかに描いているものが多いです。
いつの時代にも共通する深いテーマでありながら、それを簡潔に、わかりやすく纏めています。
そんな読みやすい作品だからこそ、国語の教科書に載るのかもしれませんね。

さて、「短編の名手」と言われていた芥川龍之介ですが、長編はどうなのかというと・・・
苦手でした。正確には評価を受けた長編は少なかったのです。

このような声に、繊細な芥川の心は傷ついていくのです。
最終的に精神を病んだ芥川龍之介は睡眠薬による服毒自殺でこの世を去ります。

彼の死を悼んだのが友人の作家、菊池寛。
文藝春秋社の創設者でもある彼は、「文藝春秋」創刊からの芥川の功績を讃える為、彼の名を冠した賞を創設しました。

今では直木賞と共に年2回の選考があり、純文学における新人作家の登竜門となっています。

作品のあらすじ

物語は蓮の花漂う極楽の場面からスタートします。
極楽の朝はとても穏やかです。
そんな朝の極楽を散歩していたお釈迦様は、ふと下の様子をご覧になられました。
下の地獄では、生前に悪事を働いたものたちが苦しむ地獄がはっきりと見えます。

お釈迦様は、その地獄の中で苦しむカンダタ(作中漢字)を見つけます。
彼は生前に殺人や放火などあらゆる悪事を行ってきました。
しかし、そんな彼にも良い面があります。
彼は自然の中で出会った一匹の蜘蛛を殺さず、助けた(見逃した)ことがありました。
お釈迦様はカンダタのそんな姿を思い出し、その深い慈悲により、地獄に向かって、一本の蜘蛛の糸をまっすぐに投げ入れるのです。

さて、地獄で苦しんでいたカンダタは、自分の目の前に降りてきた蜘蛛の糸に驚くと同時に、「しめた!」と思い必死に登っていきます。
これを登ったら地獄から出られるばかりか、極楽にも行けるかもしれません。
そう思うとカンダタはせっせと蜘蛛の糸を登っていきます。

もう大分登ったであろう頃、ふとカンダタは下を見ます。
すると、自分が登ってきた糸を、多くの悪人が登ってくるのが見えました。
ただでさえ細い蜘蛛の糸です。
多くの人が乗ってしまえば糸が切れてしまうかもしれません。

そこでカンダタは、登ってくる大勢の悪人に向かって「この糸は俺のものだ、降りろ」と発言します。
すると、蜘蛛の糸はたちまち・・・

まとめ

さて、ここまで紹介した「蜘蛛の糸」。
最終的にカンダタはどうなってしまうのでしょうか。

お釈迦様の深い慈悲とは?漂う蓮の花が意味するものは?
「蜘蛛の糸」は、短い中にも多くの考察要素を秘めていると同時に、話のわかりやすさから教材としても非常に秀逸です。

繰り返しになりますが

●初めて純文学に触れる人
●初めての純文学だけど、長編はちょっと・・な人
●短編小説が好きな人
●わかりやすい小説が好きな人
●芥川龍之介い興味を持った人

当てはまる方にはおすすめですよ。

カンダタは確かに生前悪事をたくさん働きました。
ただ、自分可愛さゆえに人を出し抜こうとするのは、我々にも思い当たる部分があるのではないでしょうか。
なぜなら「自分さえ良ければいい」と人は考えるのものだから。

善人か悪人かというのは行動の違いであって、人の考え方に大差はないのかもしれませんね。

あなたは「自分さえ良ければいい」と考えることはありませんか?