書評

【書評】芥川龍之介の「杜子春」を読む 人として忘れてはいけない気持ちとは

芥川龍之介の「杜子春」を読む 人として忘れてはいけない気持ちとは

世の中は簡単に言えば、「お金で買えるもの」と「お金で買えないもの」に大別出来ます。

確かにお金を持つことは幸せでしょう。
ありとあらゆる贅沢を極め、人との違いにステータスを感じることができます。
お金があるからこそ生じる出会いや付き合いも世の中にはたくさんあるでしょう。
それらが更にお金を稼ぐ動機を生んでいるのかもしれません。

勿論お金を稼ぐこと自体は悪いことではありません。
寧ろ努力に対して正当に払われたものであると言えるでしょう。

大事なのは、「お金で買えないものがある」という事を知ることではないでしょうか。

例えば、愛情や正直さなど。

今回はそんな大切な事を学べる芥川龍之介「杜子春」の紹介です。

杜子春はこんな人におすすめ
人生で大切なものは何かを学べる杜子春は、以下のような人におすすめです。

●お金があるけどどこか心が空しい人
●人生で大切なものを改めて学びたい人
●「人間らしさ」を読んでみたい人
●芥川作品に慣れていきたい人
●ハッピーエンドの作品が好きな人

短編だからと侮るなかれ、大人になって読み返すと杜子春が感じる「幸せ」や「悩み」、そして「正直さ」や「人間らしさ」がとても心に響きます。

子供でも読めるわかりやすい作品ですが、寧ろ大人の方が内容が染み入るかもしれません。
社会に出てお金を稼ぎ始めると、人は大事なものを見失いがちになるのかもしれませんね。

著者紹介 芥川龍之介

芥川龍之介は大正時代に活躍した日本の小説家です。
「羅生門」「鼻」「芋粥」「藪の中」など、多くの優れた短編小説を生み出した「短編の名手」とも言われています。

作品の特徴として、「エゴイズム」「醜さ」といった人の「内面」を短編の中であざやかに描いているものが多いです。
いつの時代にも共通する深いテーマでありながら、それを簡潔に、わかりやすく纏めています。

芥川作品をざっくり分けると、
羅生門・芋粥のような歴史物を中心とした「初期」
芸術至上主義を打ち出して、長編にもチャレンジした「中期」
そして精神を病み始め、告白的自伝を描き、人生を振り返り始めた「後期」とあります。

それぞれに代表作のある芥川作品ですが、この杜子春は1920年に描かれており、「中期」の作品と言えるでしょう。

題材を他の作品から取る芥川作品らしく、本作も中国古典を下敷きにしています。
概ね原作と内容に大差はないですが、本作が児童雑誌「赤い鳥」に掲載されたこともあり、結末を少しいじって、ハッピーエンドとしています。

あらすじ

物語は当時の中国・唐王朝、洛陽の都を舞台に始まります。
ある春の日暮れのこと、西門の下でぼんやりと空を仰いでいた若者杜子春。
元は金持ちの息子だったが、親の遺産で遊び尽くし、生活は落ちぶれていました。
「こんな思いをして生きているくらいなら、死んだ方がマシかもしれない」彼は一人そんな事を考えていました。

するとそこへ片目眇の老人が突然彼の前に足を止め、「何をしているのか」を声をかけます。
杜子春は今の窮状を話すと、その老人が「それは可哀想だ。良い事を一つ教えよう」といい、彼に「この場所を掘るように」と指示をします。
驚いてもう一度問い正そうとすると、そこに老人の姿はありませんでした。

かくして老人の指示通りの場所を掘ると、黄金がいっぱいに掘り出されました。
たちまち杜子春は大富豪となり、この世の春を謳歌するのです。
しかし、夜な夜な遊び尽くした杜子春は、わずか3年ばかりで大金を使い果たし、再び一文無しになってしまいました。

するとまた片目眇の老人がやってきて、同じような指示をしました。
結果は同じ。再び大金持ちになるものの、また放蕩の限りを尽くして使い果たします。

さて3度目の老人との出会いの時、杜子春の心境は変化していました。
お金があるときはちやほやするが、なくなった途端に離れていく人の心を薄情に感じていたのです。
そこで、仙人になるべく仙術の修行をしたいと申し出ます。
その申し出に対し、自身が仙人である事を明かして、承諾します。

そして修行場の山へ連れて行き、自分が帰ってくるまで「何があっても口を開いてはならない」と言い残します。

杜子春は教えを忠実に守り、虎や大蛇、更に地獄に落ちてあらゆる責め苦を加えられても一言も発しません。
怒った閻魔大王は彼の両親を連れてきます。
さすがの杜子春でも、鬼の前で滅多打ちにされても尚子供を想う母親の姿を見て、「お母さん」と叫んでしまいました。

そこで現実に戻ります。
杜子春は春の日暮れに、洛陽の西門の下にいました。
「お前はこれからどう生きる」仙人の問いに杜子春は答えます。
「人間らしい、正直な暮らしをするつもりです。」

仙人は答えを聞いて満足すると、泰山の麓にある一軒の家と畑を与えて去って行きました。

まとめ

人生の大切なものを学ばせてくれる名作、杜子春。
お金で買えない幸せ、忘れてはならない気持ち、人間らしさ・・・

短く読みやすい小説の中に、人生の大切なエッセンスが詰まっています。
日々の生活で疲れてしまった大人の方、ぜひ杜子春を読んで心を浄化してみてください。

そして少しでも「人間らしい、正直な暮らし」を取り戻せることを祈っています。