書評

北川恵海さんの「ちょっと今から仕事やめてくる」を読んだ感想と見どころ!

北川恵海さんの「ちょっと今から仕事やめてくる」を読んだ感想と見どころ!

この小説は数年前に映画化されたことでも話題になりました。
ブラック企業に勤めて、心身ともに衰弱した主人公の隆は帰宅する途中、無意識に線路に飛び込もうとしてしまう。
そのとき、ヤマモトと名乗る同級生に止められます。

その後、隆はヤマモトと話をするうちに少しずつ心にゆとりを取り戻し、自分の生き方に疑問を持つのでした。
働いている人なら必ず共感できるところがあり、また、勇気づけてくれると思いますので、世のサラリーマンにぜひ一度読んでほしい小説となっています。

ここまで人は追い詰められる…

人は何のために働くのか——入社してから3か月ほどは、そればかり考えていた。
けれどもう、考える気すら起こらなくなった。辞められないなら働くしかない。
余計なことは考えない。ただひたすらに、一週間が過ぎるのを待つだけ。

私も自分に合っていない職場にいたとき同じ気持ちでしたので、この場面の隆に非常に共感しました。
仕事で本当に自分に余裕がなくなると、何もする気が起きず、ただひたすら目の前の仕事をして一週間を耐え忍ぶ毎日だったなあと当時を思い出しました。
隆も入職する前はせっかくもらえた内定で、この会社のために役に立ってやろうと意気込んでいました。

しかし、ブラックな環境で、たった3か月でここまで、心身とも疲弊してしまいます。
このシーンの少しあとで、線路に身を投げ出そうとしたところ、同級生を名乗るヤマモトに救われます。
ヤマモトとの出会いから少しずつ隆が元気づけられ、気力を取り戻していく姿見ていると、自分も元気づけられるような気がしました。

ヤマモトのコテコテの関西弁でキャラが立っていて、話す内容もおもしろく、時折胸に刺さる言葉を残していってくれます。
こんな人と私自身も会って話がしてみたいなあと思いました。

一週間の歌

月曜日の朝は、死にたくなる。
火曜日の朝は、何も考えたくない。
水曜日の朝は、一番しんどい。
木曜日の朝は、少し楽になる。
金曜日の朝は、少し嬉しい。
土曜日の朝は、一番幸せ。
日曜日の朝は、少し幸せ。でも明日を思うと一転、憂鬱。以下、ループ

これは隆が作った一週間の歌です。
サラリーマンなら程度に差はあっても、共感できる歌じゃないでしょうか?
一週間の始まりである月曜日は一番憂鬱で、「また仕事か~」と思いながら出勤しますし、木曜日くらいになると、もうすぐ週末で休みだと思うと楽になりますよね。

そして、金曜日は今日頑張れば明日は休みだと思うと嬉しくなってきます。
日曜日に明日のことを考えると憂鬱になるのは、サザエさん症候群と一緒ですよね(笑)
この歌はサラリーマンだけではなく、学生にも当てはまる人はいると思います。
作者の北川恵海さんはサラリーマンの心情をよく知っていて、うまく文章にされているなと感心しました。

この作品では、社会で働く人たちなら、何かしら共感できる部分が多くあります。
どんな人でも、多かれ少なかれ仕事で不満などがあるはずで、そんな私たち働く人たちの心の内をうまく表現してくれています。
共感できるからこそ、隆に感情移入でき、物語にも入り込んでいきやすく夢中で読み進めてしまいました。

ついに退職!!

「お前は社会ってもんをわかってねーんだよ!こんなことで挫ける奴はなあ、人生なにやっても駄目に決まってんだよ!」
「どうせお前みたいな奴はなあ、一生負け犬で終わるんだよ!」
「俺の人生を、お前が語るんじゃねーよ!」
「俺の人生は、お前のためにあるんでも、この会社のためにもあるんでもねえ。俺の人生はなあ、俺と、俺の周りの大切な人のためにあるんだよ!」
「負け犬、負け犬って一体何を指して負けなんだよ。人生の勝ち負けって他人が決めるものか?そもそも、人生は勝ち負けで分けるものなのか?じゃあ、どこからが勝ちで、どこからが負けですか。自分が幸せと思えたらそれでいいでしょう。僕は、この会社にいても自分が幸せだとは思いません。だから辞める。ただ、それだけです」

隆がついにブラック企業を辞めるときのシーンです。
隆が上司とかなり熱い口論になりますが、物語が始まったとき心身ともに衰弱した弱気な隆の姿はもうなく、ヤマモトとの出会いをきっかけに活力を取り戻します。
こういう嫌な上司や先輩って中にはいますよね。

そして、「こんなことで挫ける奴はなあ、人生なにやっても駄目に決まってんだよ!」などこういう言葉を平然と浴びせてきますよね。
それに対する答えはすべて隆が言葉にしてくれて、気分がスッキリしました。
自分の人生は自分のものです。
決して会社のためにも、働くためだけにあるわけではないです。

また、人生において勝ち組、負け組などといった言葉もありますが、確かに何をもって勝ち負けが決まるのか定かではないです。
本当に隆の言うとおりで、自分が幸せだと思えたら、それはいいのではないでしょうか?
この世界に誰一人として自分と全く同じ人なんて存在しないのに、そんな中で勝ち負けのルールさえもあやふやな状態で、他人と比べて勝ち負けを決めるより、今、自分が幸せだと思えればそれだけで人生勝ちだと思いました。

この後で、上司に「このご時世、次の職場が簡単に見つかると思うなよ」と言われますが、隆は自分がこの会社を簡単に選びすぎた。
ただ内定をもらったからなんとなく就職するなんてことをしてはいけなかった。
時間がかかってもいい、本当にやりたいことを見つけて、最後に自分の人生後悔しない道を見つけてみせると言います。
隆の言う言葉は理想で、夢を見すぎていると思う方もいるかもしれないですが、仕事と言うのは人生の1/3くらいは費やすものですから、もしこれから就職や転職を控えている人はよくよく考えて仕事を決めてほしいなと思います。

まとめ

冒頭でも言いましたが、この小説はすべての働く人を励ます優しい物語だと思っています。働く人なら、小説の中でどこか必ず共感できる場面があると思います。
隆が少しずつ立ち直り、自分の足でもう一度歩き始める姿に元気づけられました。

また、ヤマモトの言葉が胸に響くもの、的を得ているものが数多くあり、小説の中で隆が立ち直ると同時に、私自身もヤマモトの言葉救われました。
内容も決して重すぎず、サクサクと読み進めていけますので、働く皆さんにぜひ読んでほしいです。
特に今、仕事で辛い思い、嫌な思いをされている方にはぜひ一度、北川恵海さんの「ちょっと今から仕事やめてくる」を読んでほしいと思います。