書評

深水黎一郎さんの「ミステリー・アリーナ」を読んだ感想と見どころ!

深水黎一郎さんの「ミステリー・アリーナ」を読んだ感想と見どころ!

この小説は一風変わったミステリー小説で、一つの事件に対して複数の推理がなされるいわゆる多重解決ものと言われるミステリーです。
突拍子もない推理やばかばかしいと思えるような推理も出てくるため、純粋なミステリーを楽しみたいという人は物足りないと思うかもしれません。

ですが、ミステリー好きならこの小説のような展開はおもしろいと感じる人は多いのではないかと思います。
ちなみに、この小説では一つの事件に対して15個もの推理が展開されます。
少しでも気になった人やミステリーが好きな人に一度は読んでほしい小説です。

ミステリー・アリーナとは?

「さあさあさあ、今年もやって来ました!年に一度のお楽しみ、大晦日の夜恒例の国民的娯楽番組《ミステリー・アリーナ》!貧富の差が拡大し、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなった二十一世紀中葉のこの日本、人生の一発大逆転を狙ってチャレンジするこの超人気番組も、今回で記念すべき第十回を迎えます!」」

この物語はミステリー・アリーナというテレビ番組が舞台になっています。
ミステリー・アリーナでは、番組のために作られたミステリー小説が画面に表示され、その犯人を出場者が当てるという趣旨の番組です。

もし、犯人を見事当てることができれば、これまでにキャリーオーバーした分を含めて、20億円の賞金をもらえるという一発逆転の夢のある番組でした。
今回の出場者はミステリー小説が好き過ぎるミステリーオタクたち15人で、「嵐で孤立した館で起きた殺人事件」の謎を解いていきます。

もし犯人が当てた人が複数いた場合、先に回答した人に賞金が与えられるため、早押しの要素もあり、本当のテレビ番組のような要素もありました。
この小説のおもしろいところは問題である殺人事件のパートと出場者が推理を披露するパートが交互に描かれているところだと思います。

小説の流れとしてはまず、殺人事件のパートが描かれ、出場者が犯人が誰か分かった時点で推理パートへと移行します。
犯人は最後に明らかにされるため、その時点では正解か不正解か分かりません。

そして、続きの殺人事件のパートへ戻り、また推理パートへと進行していきます。
そのため、自分も出場者になったつもりで誰が犯人なのか推理しながら、読み進めていける点が非常に魅力的だと思いました。
15人出場者がいるので、15個の推理を見ることができ、「なるほど!」と思えるものから無茶苦茶な推理のものまであり、読んでいて飽きることがありません。

また、「えっ!?ここで?」という場面で推理パートに移ることもあり、そういった点もこの小説のおもしろいところだと思います。

1つ目の推理

「多重人格者?」
「ああ。第一章の終わりでこの男は自分に宛がわれた部屋に入って、ベッド
に横になった瞬間に意識が途切れているだろう?本人は運転疲れで眠ってしまったと思っているようだし、実際ちょっと寝たのかもしれないけど、実は睡眠中に人格の入れ替わりが起きて、この男の別人格が表面に現れ、犯行に及んでいたんだよ」

この場面は最初の推理パートです。
語り部の男性が犯人であると一人の出場者が推理を披露してくれます。
この文章通り、語り部の男性が実は多重人格者で、本人は眠ったような描写が番組ではなされているが、そのタイミングで実は別人格が現れ、その別人格が犯行に及んだのだという推理でした。

ここまでであれば、ミステリー小説の中には犯人が多重人格者で、小説の中でメインに描かれている人格と別の人格が殺人を犯すというものもあるかと思います。
ですが、この出場者が回答したタイミングが問題で、実はまだ事件がまともに起きていないんですよ!

ここまでの事件パートの流れを簡単にまとめると、語り部の男性が館に到着し、ラウンジで友人と少し話をして、一度荷物を置きに客室に行き眠りに落ちます。
一時間後、目覚めた男性は再びラウンジに顔を出し、友人と談笑します。

しかし、館の主である鞠子がやって来ないことから、鞠子の部屋に向かったところ、部屋で血を流して倒れている鞠子を発見しました。
この時点で推理を披露しています。
普通は何もわからないですよね(笑)
私もまったくわかりませんでした。
わかっていることは被害者が血を流して死んでいるということだけで、凶器もわからないですし、関係者のアリバイがどうなっているかもわかりません。

そもそも語り部の男性の名前もまだ明らかになっていないままです。
このようにほとんど情報もない状態から推理が披露されるというのも、おもしろいところではないかと思いました。

2つ目の推理

「おおっとまたまた出ました意外な犯人!一人遅れてやって来て、探偵役を買って出ている丸茂氏ですが、すると意外な犯人の黄金パターンその2、探偵が犯人というやつですか!」

これは2つ目の推理パートの場面です。
鞠子が殺されているのを発見し、友人たちを大声で呼び集まったところでした。
丸茂という人が探偵役を買って出るところで事件パートは終わっています。
つまり、まだほとんど事件は進行していないにも関わらず、2つ目の推理パートに突入しました。

今回は探偵が犯人という推理で、これもミステリー小説ではたまにある展開ではないでしょうか?
探偵は犯人の場合アンフェアではないかと言われることも多いですが、今回の推理では探偵が犯人であるという根拠を、この文章の後で述べられています。
この推理に限らず、ミステリーオタクが出場者ということもあってか、ミステリー小説でありそうなトリックを元に推理していることが多い印象を受けました。
ミステリー好きの人なら確かにそういうトリックあるよねと共感できるようなものもあり、次はどんな推理が展開されるのだろうと楽しみで、ページをめくる手が止まりませんでした。

まとめ

ここまでの紹介で、この小説の普通のミステリー小説とは違うところをわかっていただけたのではないでしょうか?
一つの事件に対してどんどん異なった推理が展開されていきますので、どの推理が正しいのか予想したり、自分で推理していくのもおもしろいと思いますよ!
普通のミステリー小説を読み飽きたという人やミステリー好きの人にはぜひ一度読んでみてほしい小説です。
深水黎一郎さんの「ミステリー・アリーナ」ぜひ皆さん手に取ってみてください。