書評

国際比較データで分かりやすい!『仕事と家族』

国際比較データで分かりやすい!『仕事と家族』

ワークライフバランス、働き方改革など、労働に関する関心は高まり、政策も旺盛に実行されています。
この本では、主に女性の労働を国際比較しながら、夫や家族のあり方について書かれた本です。
アメリカとスウェーデンの女性労働力参加率が同程度など、思い込みやイメージとは異なるデータが掲載されているかもしれません。

●女性の労働参加率

国ごとの労働の違いを表す最も単純な数値は、労働力参加率である。

2012年の世界銀行の調査では、女性の労働力参加率が高い国にはイスラエル、スウェーデン、アメリカ、ドイツなどがあります。
日本はこれらの国に比べ少なくなっています。一方、これらの国で男性の労働力参加率の差はほとんどありません。

では、女性の労働力参加率が高い国の助成は、どのような仕事をしているのでしょうか。
スウェーデンの女性は約60%がフルタイム雇用で働いています。
アメリカは50%です。しかし日本、ドイツは40%未満となっています。
一方、日本は自営・家族従業が10%近くあり、アメリカ、スウェーデン、ドイツの3倍近くの割合になっています。

就業セクターでは、アメリカ、日本、ドイツは働いている女性のうち7割程度が民間企業ですが、スウェーデンは40%しかありません。
しかし、上記の通り4か国のうち女性の労働力参加率が一番高いのはスウェーデンです。
では、いったいどのような働き方をしているのでしょうか。
答えは公的雇用です。スウェーデンでは女性の60%近くが公的雇用で働いています。
特にケア労働の従事者が多くなっています。

スウェーデンなど北欧は福祉が充実しているイメージがありますが、そのために税率も高くなっています。
高い税率で集めた税金を使って、女性を公的雇用により活用し福祉を充実させる、という循環になっていると考えて良いでしょう。
この点では、日本は逆に民営化に進んでいます。

●女性の労働力参加と出生率

女性が働くようになったことは未婚化のみならず、カップルの出生率の低下を通じて少子化を引き起こしてきた、とする。

実は、女性労働力参加率と出生率の関係は、時代により変化しています。
1971年の調査によると、女性の労働力参加率が高い国ほど合計特殊出生率が低い傾向にありました。
しかし、2011年の調査では大きく逆転し、女性労働力参加率が高い国ほど、合計特殊出生率も高くなっています。

例えば、女性労働力参加率が65%ほどの日本は合計特殊出生率は1.4未満ですが、75%前後のニュージーランド、イギリス、ノルウェー、スウェーデン、アメリカ、オーストラリア、フィンランドは1.8を上回っています。ただし、ドイツやポルトガルなど日本と同程度の出生率の国もあります。

また、1971年→2011年という推移でみれば、先進国では、たとえ女性労働力参加率が上がっても出生率は下がっています。
そのため経年的には「女性労働力参加が出生率の<低下>につながる」と考えられます。
しかし女性の就労機会を抑制したりするべきではないので、その低下を抑制、あるいはプラスにするための「共働きのための政策」が必要だというのが本書の主張です。

●日本と欧米の雇用慣行の長所と短所

理解不足のために、実現不可能な、いいとこどりの組み合わせを想定し、それをもとに他の政策に反対するような態度が最も問題である。

欧米の雇用は「ジョブ型」と呼ばれ「仕事」に対して人を雇用します。
例えば財務担当などです。
この場合、その仕事で企業に就職した人は原則として財務の仕事しか行わず、転勤もありません。

一方、日本は「メンバーシップ型」と呼ばれ、特に新卒採用において「総合職」という採用のされ方が多く、どこで何の仕事をするのか不明なまま就職します。
また、ジョブローテーションなどで仕事内容が変わったり、転勤で住居を変える必要が出てきたりします。

以上の点だけを見れば、アメリカのほうが家族や育児、出産に向いていそうです。
しかし一方で日本は解雇規制が厳しく失業リスクが小さい面があります。
不要・縮小となった事業がある場合、アメリカであれば解雇になりますが、日本の場合は配置転換や転勤でコントロールすることで雇用を維持しています。
どちらが良いのかは難しいところです。

●性別職業分離

この性別職業分離は、北欧諸国が「大きな政府」の国であることに起因する。

既に記載したように、北欧では女性の労働力参加率が高いものの、その内訳は公的雇用のケアワーカーが多くを占めます。
これらの国では男性が民間企業、女性は公的雇用、という意識が強いようです。
そのため、安心感や育児・介護の充実はあるものの、必ずしも働き方において男女平等とは言えない面があります。

●男性的家事と女性的家事

家事分担研究が盛んな米国でも、家事にはいわゆる「女性的家事」と「男性的家事」があるといわれてきた。

北欧でも性別職業分離があるように、実は夫の家事参加率が高い国にも、男女で家事内容の違いがあります。
女性的家事とは、食事の準備、洗濯、掃除などがあります。
男性的家事には家や車のメンテナンス、芝刈りなどがあります。
日本で芝刈りが必要な住宅は少ないですが、例えばゴミ捨ては男性が多いようです。
なぜこのような違いが生じるのかというと、スキルの差や、求める水準の差があるとされています。

一方で、スキルなどで説明できないものもあります。
他の国では夫も行っているのに、日本ではほとんど妻が行っている家事が洗濯です。
昔ならいざしらず、洗濯といってもボタンを押すだけなので、実質的には干すのと、畳むだけです。
食事ほどスキル差が埋めにくいものではありませんから、洗濯は夫がもっと引き受けるべきかもしれません。