書評

宇宙SF&ミステリー好きは必読!J.P.ホーガン『星を継ぐもの』

宇宙SF&ミステリー好きは必読!J.P.ホーガン『星を継ぐもの』

人間が宇宙に進出した未来のある時点。
月面調査隊が1人の死体を発見します。
その死体を調査したところ、なんと5万年前に死亡した人間であることが分かります。
5万年前には人類は月に到達していません。

月で死んでいた彼は、いったい何者なのかでしょうか!?
一方、木星の衛星「ガメニデ」では、地球人が作ったものではない宇宙船が発見されます。
この謎に、多数の科学者が挑みます。

●5万年前の死体の発見

実は、月面でいささか解釈に窮する事態がありまして、それでこの会議が招集されたのです。

原子物理学者のヴィクター・ハントは、要請がありウェストウッド生物学研究所に向かいます。
ある調査のために最先端のスコープが必要だと言うのです。
しかも調べるのは人間だといいます。
「人間なら解剖すればいいじゃないか」という疑問を持ちますが、何千万ドルという謝礼を受けられるということでヒューストンに向かうのでした。

ウェストウッド生物学研究所で、国連宇宙軍のグレッグ・コールドウェルはハントを迎え、説明を始めます。
まず、月面に謎の洞窟が発見されたことを伝えると、ハントは「通常はこのような洞窟は発生しない」と答えます。

加えて、コールドウェルは洞窟から身分不明の死体が発掘されたことを伝えます。
この死体はチャーリーと名付けられ、死因も不明、どこからこの洞窟にやってきたかも不明。
誰もが持っているはずの身分証明書も持っておらず、月面基地からいなくなった人物もいません。

そこで、チャーリーは地球へ運ばれ、専門家による調査が行われました。
コールドウェルは説明を続けます。
調査の結果、チャーリーは、この地飛球のいかなる国の国民でもないこと。
そして、死んだのは5万年前であること…。

●チャーリーはどこから来たのか?

そうなると、チャーリーは地球以外からやってきたと考えるしかない。

原子物理学者であるハントも、自ら調査をしました。
死亡した肉体は放射性同位炭素が崩壊するので、年代が測定可能です。
結果、死亡したのが5万年前という調査結果が正しいことを確信します。

また、調査からチャージ―が地球外生命体とは考えにくい、少なくとも地球とかなり似た環境で生きていたことが判明します。
さらにチャーリーのバックパックに入っていたものに、高い技術によって作られた超小型原子力発電機があることが分かりました。

もしチャーリーが地球人である場合、5万年前に地球に高度な文明が存在し、かつ現在は何の痕跡も残していないことになります。
そのため、ハントは「チャーリーは地球外の生命体ではないか」と考えます。

しかし問題は、どこからどう見ても地球人であることでした。
一方、他にはペン、メモ帳、鍵、ナイフといったものしか持っていませんでした。
メモ帳には文字が書かれていましたが現代の文字とは異なり、破損も酷い状態でした。

●メモ帳

重大なのは、ハント先生、その何も変わったことがないという、それ自体ですよ。

コールドウェルは再び研究者を招集し、脳の内部や骨格、歯に至るまで、人間と変わったところはなかあったことを説明します。
一方、死因については宇宙服の破損による急速な冷却と乾燥であることが判明していました。

またハントは、メモ帳のうち数字の解読に成功していました。
数字は十進法でなく十二進法であることが分かりましたが、それ以外には何も分かりません。
表のようなものに数字が並んでいますが、何を意味するのか、誰にも分かりませんでした。しかしこのメモ帳は、この謎の答えのヒントであることが後に判明します。

●研究者たちの議論

議論はいつ果てるとも知れなかった。

この作品の面白いところは、以降、多数の学者がチャーリーの正体について議論することです。
かたくなに「チャーリーは地球人に違いない」という学者もいれば、「別の惑星で、地球と同じような進化をした生命体ではないか」「偶然で別の惑星で同じ進化を遂げることは考えにくいが、そうではなく、人間というのは、惑星に関わらず進化の最終形態なのではないか」「神による何かの意志が働いているのおではないか」といった議論がされます。
しかし問題は、どれも全く証拠がないことでした。
やがてマスコミなどは、「チャーリーを月の人類ルナリアン」として大きく報道するようになります。

●惑星ミネルヴァとガニメデで発見された宇宙船と宇宙人

つまり、わたしたちは勝手にガニメアンがミネルヴァからやって来たものと思い込んでいるだけで、現実にはそれを裏付ける何の証拠もない。

議論は、さらなる調査から、火星と木星の間に存在していた惑星ミネルヴァという星が核戦争で消滅した、という仮説にまで進みます。
一方、木星の衛星ガニメデでは、地中で、地球のものよりもはるかに巨大な宇宙船が見つかりました。
さらに、宇宙船中から明らかに人間とは異なる進化をした宇宙人の死体が発見されます。
これはガニメアンと名付けられ、謎はさらに深まることになります。

●「問い」を問い直す

以上が、本書の謎です。
どう考えてもチャーリーはどこからやってきた人間なのか、答えは見つかりません。
しかし、これは「問い」の立て方が間違っているのかもしれません。
考えるべきは「チャーリーはどこから来たのか?」ではないのかもしれません。

これ以上はネタバレになってしまうので、気になる方はぜひ読んでみてください。