書評

偶然を味方につけろ!『偶然とは何か』を読んでみた!

偶然を味方につけろ!『偶然とは何か』

哲学・思想には「決定論」という考え方があります。
過去を含め現在、未来も全て決まっており変えることはできない、という考え方です。
この考え方を裏打ちしているのはニュートン的な物理学です。
物理法則を突き詰めれば、起こることは予測可能ですし、現在起こっていることも起こるべくして起きたように思えます。

一方、ニュートンの考え方を更新した量子力学では、物理的な運動やエネルギーには「ゆらぎ」や「不確実性」があることがわかっています。
これに従えば、現在も未来も確率的に決まったもの、という考え方もできます。
本書は後者の立場をとったうえで、確率や統計から「偶然とは何か」に対して積極的にアプローチしています。

●偶然の歴史

そうするとなぜ偶然が存在するのかということが、重大な問題となる。

科学が発達する以前には、偶然は論理的な説明がつかないものでした。
ですから、スピリチュアルなものとの繋がりで捉えられる時代が長くありました。
例えば「精霊」や「神」が生み出しているという考え方です。

しかしよく考えてみると、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などにおける神は、唯一の絶対的な存在なので、その決定により起こる幸運や不運は神の意志であり、偶然ではないことになります。
このあたりもややこしいところです。
他にも、起こっていることは偶然ではないという考え方には「運命」「因縁」といったものが挙げられます。

●偶然は無知から生まれる?

完全な知性にとって不確かなものは何一つないであろうし、その眼には未来も過去も同様に現存するであろう。

上記は科学者のラプラスの言葉です。
ニュートン物理学をはじめとする科学が発展すると、全てが科学的に説明できるという考え方が生まれました。
とはいえ、そう考えている人が人生から偶然を排除し、未来を予言できたわけではありません。それはなぜかという理由については「無知」を挙げています。

つまり、まだ知らない法則があるから偶然に思えたり、未来が分からないだけだ、という考え方です。
しかし完全な知性」とは何かを考えると、もはや「神」レベルとなり、科学を突き詰めた結果、神がすべてを決めているという前項目に立ち戻ってしまうようにも思えます。

●偶然の種類

本書では「偶然のメカニズム」を考えることにより、どのようにして偶然が発生しているかを記しています。
まず、ルーレットなどのようにランダム(不規則)な動きをしている場合は、その結果には偶然が生まれます。

また、複数の要因が交差することによっても偶然が発生します。
遅刻しそうで食パンを食べながら走っていると女の子とぶつかってしまい、その女の子が転校してきたクラスメイトだった、といった場合、マンガやアニメでは必然的展開でも、現実世界でそれが起こればかなりの偶然でしょう。
まずは食パンを食べながら走って登校することから始めなければなりません。

●確率と偶然

主観的な判断は、いわば心理的確率というべきものである

確率については学校で習います。
サイコロで1が出る確率は1/6です。
しかし2回連続で1が出る場合もあります。
もし4回も5回も続けて1が出ると「すごい偶然」と思うかもしれません。

ちなみに、1が5回続けて出る確率は約8000分の1です。
日本の人口を1億人とすると、日本人全員が5回サイコロを投げた際に、1が5回連続で出る人は1万人程度が見込まれます。
そう思うと「そんなに5回連続で1が出る人がいるのか」という気もします。

あるいは、5桁の番号くじで「12345」や「77777」が出れば「すごい偶然」と思うでしょう。
しかしそれらが出る確率は「51248」が出る確率と同じです。
「偶然」は主観的な面が大きいのです。

●偶然の不幸を分散させる「保険」

偶然の災害に対する相互扶助を組織化したものが保険であり、その仕組は古くから存在した

不意な災害は、予想が難しく完全に避けることができません。
そこで活躍するのが保険です。
例えば火災保険の場合、どの家に起こるかピンポイントでは分かりませんが、統計的に「全体では年間○件起きていて、被害総額は○円」といったことが分かり、保険料を算出できます。

火災保険に入って何もなかったときは単にお金を払っただけですが、不幸な「偶然」が自分に起こり火事になると補償を受けることができます。

●偶然の積極的意味

巨大隕石衝突に備えるべきか

「ダーウィンの進化論」「突然変異」「歴史的事件」などは、「単に起こったこと」ではなく、そこに歴史を変えるような積極的な意味を見出すことができます。
また、偶然起こった出来事について「責任」はどこまで問えるものでしょうか。
「想定外」という言葉が批判されますが、過去のデータから大きく外れていたり、確率が非常に低い場合は「偶然、思っていた以上のことが起こった」とも言えます。

「この問題は以前から指摘されていた」という場合も「偶然、それが起こった」からそう言えるのであって、おそらく「全く起こっていない以前からの指摘」はもっと多いでしょう。
そのような場合には、責任をなすりつけあうよりも、被害に遭った人の救済に力を注ぐべきかもしれません。