書評

人に説明できる!『必ずわかる!「○○主義」事典』

人に説明できる!『必ずわかる!「○○主義」事典』

吉岡友治『必ずわかる!「○○主義事典」』は、新聞や書籍、テレビやネットで出てくる123種類の「○○主義」や「○○イズム」などについて整理・解説した本です。
一般用語の「事なかれ主義」のようなものから「ポストモダン」「実存主義」のような専門的なものまで解説されています。ジャンルでまとめて章立てされているので、理解もしやすいオススメの本です。

●主義とは何か?

この本はちょっとした主義・主張のサンプル集である。

プロローグでは著者のこの本の執筆意図が書かれています。
それによれば、現代は誰かを指して「○○主義者」と決めつけるには複雑すぎ、また必ずしも一貫した立場をとれるわけではありません。

また「正しい/間違っている」と決めつけられるものでもありません。
そのため、○○主義を正確に理解するよりは、自分のフィーリングに合うものを組み合わせたり、脳内に「○○主義マップ」が浮かぶようになってほしい、という目的で書かれています。
「流し読みで良い」という気軽な気持ちで手に取って欲しい本です。
では、以下でいくつか紹介していきます。

●「自由」な主義とは?

リベラリズムとリバタリアニズムは、自由のとらえ方が違う

「自由」の英語には「liberty」があります。
では「自由」を重視する主義は何があるかというと大きく2つあり、しかも真っ向から対立する考え方をとっています。

1つは「リベラリズム」で「リベラル」とも表現されます。
この場合、人が自由であるためには、国家などによるある程度の調整が必要と考えます。
例えば、身体障がい者には補助をしたり、「生まれ」や「身分」といったもので不平等が起こらないようにします。
つまり社会はもともと不平等であるし、また本人の責任でない不運もあるので、それらを含めて平等になるような調整が必要という考え方です。

一方、「リバタリアニズム」は「リバタリアン」とも表現され、努力して得たものは全て自分のものと考えます。
不運も自業自得です。
そのため国家などが恵まれない人などを補助するために税金をとったりすることは、個人の自由を奪うことになるため否定的です。

さらに「ネオリベラリズム」という考え方もあります。
これは「リベラリズム」という言葉が含まれていますが、考え方としては「リバタリアニズム」に近く、国家の介入などには否定的です。
各種の行政事業の民営化などはリバタリアニズムによる部分が大きいです。

●新聞などで目にする主義

困った人々を生み出すのは、人々を助ける組織である。

「官僚主義」は「官僚制」とも呼ばれ、与えられた目的を効率的に遂行するための組織・システムです。官僚主義は行政だけでなく、大企業などでも見られます。
組織の中で個人に与えられた役割が明確に分かれているため権限が小さく、決まった決定には従わなければなりません。
国家公務員により構成される●●省といった組織の場合、実際にはその分野の素人が組織のトップに就任するため、本来は効率化を目指しているはずが、見当違いの方策が出てきたり、責任の所在が曖昧になるなどの弊害が出てくるのは、よくニュースで取り上げられています。

また「お役所仕事」の弊害として「教条主義」「瑣末(さまつ)主義」があります。
例えば市役所であれば全市民を公平に扱うため細かいルール(教条)が決められており、そのルールに合っていなければ、ちょっとしたこと(瑣末なこと)でも修正などが必要になります。
また「担当はあちらの部署です」とたらい回しにされたり、「面倒くさい」と感じる手続きが必要になったりします。

「事なかれ主義」も官僚主義の弊害の一部と本書では指摘されていますが、一般社会でも見られます。
成果が特に評価されない一方で、失敗については責められる場合、「ミスなく、そつなくこなす」のが合理的です。
そのためリスクがあるチャレンジなどの行動は起こりにくくなります。
むしろ同じことを繰り返す「マンネリズム」化することのほうが多いかもしれません。

一方で、「実力主義」「成果主義」はモチベーション向上が期待されましたが、評価が恣意的になるなどの研究で問題点が明らかになっています。

●自分の考えや行動は何主義?

私の心は自分だけでなく、無意識に社会と繋がっている。

「実存主義」は、自分が選んだ行動は自分が選んだというだけで尊重すべき、という考え方です。
つまりあらゆる行動重されるべきとなります。

「行動主義」は、心理学において心がどんな刺激でどんな反応をするかを重視する考え方です。
一般的に心理学は「心の動き」から行動を考えるように思えますが「行動主義」はその逆です。
例えば「悲しいから泣く(心→行動)」のでなく「泣くから悲しい(行動→心)」と考えるなどです。

「構造主義」は人の心は個人ではなく社会構造に左右されるという考え方です。
一方、社会構造は人々の無意識により決まる、と考えるのが「ポスト構造主義・ポストモダン・ポストモダニズム」です。これらは何かを主張するというよりは、ある主張にはその人の無意識が含まれており整合性がないことを理論的に検証します。

他にも政治、芸術などの○○主義も解説されています。「○○主義」という言葉が会話やニュースで出てきても慌てることがないよう、ぜひ読んでみてください。