書評

未来はこうなる!?『NEXT WORLD 未来を生きるハンドブック』

未来はこうなる!?『NEXT WORLD 未来を生きるハンドブック』

『NEXT WORLD 未来を生きるためのハンドブック』(NHK出版)は、2015年に全5回で放送された「NHKスペシャル NEXT WORLD 私たちの未来」の書籍版です。

この本では血液内で活動させる「ナノマシン」、Apple Watchなどウェアラブル・コンピュータの究極の形「電子皮膚」、既に実用化された実績のある「犯罪予測プログラム」など、現在進行形で研究が続けられている技術が紹介されています。

●未来を予言したジュール・ヴェルヌ(1828~1925年)

1863年、医大なSF作家ジュール・ヴェルヌは『二十世紀のパリ』という驚くべき小説を書いた。

未来はどこまで予測可能なのでしょうか。
本書の序文で紹介されている作家ジュール・ヴェルヌは1863年に執筆した『二十世紀のパリ』で、100年後のヨーロッパの科学技術を描いています。
電球が発明されたのが1860年、タイプライターが発明されたのが1868年ですから、刊行はその間の時期になります。
ちなみにグラハム・ベルが電話を発明したのが1875年、エジソンの蓄音機が1877年ですから、それより10年以上前に書かれたものです。

『二十世紀のパリ』では、「地下を走る鉄道」「ガソリンで走る車」、そして「街を支配して世の中を動かす計算機(=コンピュータ)」などが描かれました。
しかし、内容のあまりの非現実さに出版社から出版を断られ、原稿は金庫にしまわれることになります。
その内容が表舞台に出てきたのはヴェルヌの曾孫(ひまご)が金庫を開けて原稿を発見してから3年後、執筆から131年後の1994年です。

ヴェルヌほどではないにせよ、技術による未来社会は、現在の科学技術を知ることによって可能だ、というのが序文の論旨です。
では、本書で紹介されている現在の科学技術の先端の一部を紹介します。

●血液内ロボット「ナノマシン」が癌細胞をやっつける?

血液中の微小なナノマシンが常に回っていて、病気を検知したら資料を施してくれる。

実は、がん細胞のみを攻撃するナノマシンは、研究レベルで既に存在するそうです。
ただし「マシン」といってもロボットではなく、一種の抗がん剤カプセルです。
患部に届いた時点でカプセルから出てきて、がん細胞を攻撃します。

医療に関しては、松葉付けや包帯といった完全に人体の外部にあるものから、人口臓器など体内へと進化してきました。
血液中に注入するナノマシンはその究極の形です。
将来的には、がん以外の各種の病気に対応し、「体内病院」として治療し、その情報をアウトプットしてくれるものを目指しているそうです。
1998年発売のゲーム『メタルギア・ソリッド』では、既に体内管理だけでなく電話のような通信機能まで備えたものとしてナノマシンが登場しています。

●腕を増やす装着型ロボットアーム

赤ちゃんにミルクをあげながら、家事ができる。

例えば、人間の腕が4本あれば、生活でも仕事でもとても便利です。
ウェアラブル・ロボット(着るロボット)として、人体を拡張させる機器が構想されています。
これを「エクストラ・パーツ」といいます。
エクストラ・パーツに人工知能を搭載すれば、人間の脳と接続することなく利用することもできます。
身体障がい者などは、特に大きな恩恵を受けることができるかもしれません。

●電子皮膚

肌や体内に貼り付けて、24時間健康管理ができる。

既にApple Watchなど、身体に装着する電子機器(ウェアラブル・デバイス)はある程度、定着しています。
特にスポーツや健康分野では、24時間装着して脈拍などのデータを測定し、スマホやパソコンで確認する商品も発売されています。

その究極の形ともいえるのが皮膚に張り付ける「電子皮膚」です。
極薄の電子端末であるため、時計などアクセサリーの形をとる必要がありません。
また身体情報もより多く得ることができます。
さらに、電子皮膚をキーボードやマウスなどの「入力装置」として利用することも検討されています。
この電子皮膚の最大のハードルはエネルギー源(バッテリー)のようです。
また出力するための通信機能も必要かもしれません。

●犯罪予測プログラム

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか(映画:ブレードランナー原作)』のフィリップ・K・ディック原作の映画『マイノリティ・レポート』(2002年公開)では、3人の預言者が殺人を予言し、事件発生前に犯罪者を逮捕するシステムが導入された社会を描いています。

またアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』では「シビュラシステム」により人間は管理され「犯罪係数」によりその人物の危険性を測定、場合によっては拘束される社会を描いています。
実は2011年に既にアメリカで「プレディクティブ・ポリシング(予測警察活動)」、通称「プレッド・ポル」としてサンタクルーズ警察で導入されました。
あまりの通報の多さに対処しきれなくなっていた警察は、過去12万件の通報や犯罪記録、街灯の故障記録やバーの営業時間などを入力し、犯罪が起こりそうな場所を事前に予測するそうです。

こういった仕組みにより警察の業務は効率化され、導入初年度は逮捕件数は56%増加し、盗難車の発見は22%増加したそうです。
また翌年には犯罪率が16%減少しました。
「プレッド・ポル」は、『マイノリティ・レポート』や『サイコ・パス』のように個人を特定するのではなく「犯罪が起こりそうな場所」というプライバシーを侵害しない仕組みであることも実用化に向いていると言えるでしょう。

●NEXT WORLDはやってくるか

心の準備はいいですか

『NEXT WORLD』では、これらを含め46のトピックが収録されています。
どれもきちんとした科学に基づいて開発中の技術です。
しかし便利だとしても、倫理的・社会的な問題で禁止するのかを選ぶのは人間です。
この意味でもどのような技術が開発されているかを先んじて知ることは意義があるのではないでしょうか。