書評

世界史の教科書に載らない裏側の立役者!『世界の海賊大辞典』(宝島社)

世界史の教科書に載らない裏側の立役者!『世界の海賊大辞典』(宝島社)

みなさんは海賊というと、どのようなイメージを持つでしょうか?
『ONE PIECE』のような冒険でしょうか?
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウようなヒーローでしょうか?
それとも凶悪で無法者の悪人集団でしょうか?
この本では海賊がどのような活動をし、それが歴史にどのような影響を与えたかを紹介しています。

●世界史において海賊が果たした役割

紀元前の昔から現代に至るまで、海賊がいなかった時代はない。
海賊は海を舞台に船を襲い、金品を強奪するアウトロー的存在で、正々堂々と彼欄の名前や存在が教科書に載ることはない。
東洋・西洋を問わず世界中の海に出現した海賊が、社会的にも政治的にも経済的にも多大な影響を及ぼしていたにも拘(かか)わらず、だ。

この本は、海賊の歴史や海賊船の仕組み、歴史に名を残した海賊などについての本です。
歴史に名を残した海賊には、マンガ『ONE PIECE』(集英社)のキャラクターとして名前が登場する人物もたくさんいます。

では、教科書に載らない「裏の世界史」として海賊が果たした役割を見ていきましょう。

●海賊の呼び名

海賊にはいくつかの呼び名がつけられています。
1つは「パイレーツ」で、これが海賊全体を表します。
一方で「ヴァイキング」は北欧で活動した海賊を指します。
「村上水軍」で有名になった「水軍」は日本の瀬戸内海で活動した海賊、「倭寇」は東シナ海で活動した海賊です。

●古代ギリシア~ローマ時代

紀元前には世界中の海で海賊が暴れ回っていたと言われるほど、海賊の歴史は古い

紀元前1300~1200年頃には既に海賊は存在していたとされています。
クレタ島のミノス王の時代や、フェニキア人が活動していた時代の記録が残っているそうです。
また、古代ギリシアのアテネが没落すると、多くのギリシア人が海賊になっていったと書かれています。

古代ローマのユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が海賊の人質になったエピソードもあります。
海賊が身代金として20タレント(タレントは当時の通貨)を要求したところ、カエサルは「私の価値に対して安すぎる」として、わざわざ身代金を50タレントに引き上げたとされています。

●ヴァイキングの時代

800年頃、北欧のヴァイキングが南下し、ヨーロッパに攻め込みます。
クヌートは、イングランドを征服し王にまでなりました。
地中海もヴァイキングにより荒らされることになります。
なお、アニメ化もされたマンガ、幸村誠『ヴィンランド・サガ』(講談社)は、この時代の物語です。

●北アフリカのバルバロッサ兄弟

兄・ウルージと、弟・ハイレッディンの兄弟です。
ウルージを中心とし、スペインからオスマン帝国までの広大な範囲に影響力を持ちました。
その後も海賊の活動は続きましたが、オスマン帝国の衰退に伴って弱体化していきました。

●歴史を大きく変えたフランシス・ドレイク

世界一周を果たしたフランシス・ドレイクは、まさにそうした時代を象徴する海賊だおる。
彼は嬢王平価からナイトの称号を与えられ、やがてはスペイン艦隊を打ち破るまでに至る。

海賊の歴史の中でも重要な役割を果たしたのが、イギリスのフランシス・ドレイクです。
一般に、初めて船で世界一周をしたのはマゼランとされていますが、実はマゼランは途中の太平洋で死亡しています。
そのため正確には「マゼラン船団」です。

一方、船長として初めて世界一周をしたのがフランシス・ドレイクです。
この世界一周で得た財宝などの価値は60万ポンドで、当時のイギリス国家の年間収入すら超えていたと言います。
ドレイクは、このうち半分をイギリスに献上しました。この資金がなければ、歴史は大きく変わっていたでしょう。
というのも、この資金を使ってスペイン無敵艦隊を破ったのもドレイクが率いるイギリスだからです。

当時のエリザベス女王は、海賊をイギリス国家の総司令官とすることは難しいと考え、ドレイクにナイトの称号を与え、あえて副司令官に任命しました。
しかし実質的には司令官としてスペイン無敵艦隊を破ります。

こうしてイギリスはヨーロッパの制海権をスペインから奪い貿易で潤いました。
この貿易の際に海賊を中心として作られたのが世界で初めての株式会社「東インド会社」です。
しかしこの貿易が、後の中国(清)とのアヘン戦争へと繋がっていきます。
また、海賊の活動や貿易がもたらした資金がなければ、イギリスで産業革命がおこることは難しかったでしょう。

また南北アメリカ大陸の中間地点のカリブ海でも海賊が活動していました。

●海賊船員の分け前

海賊船は、逃げ場がないため、陸の兵士よりもいっそうの協力が必要でした。
そのため、略奪物などの配分は非常に公平だったとされています。
本書で紹介されている例では、一般船員の戦利品の分け前を100とした場合、
船長…200
航海士…200
甲板長…150
砲術長…150
船医…125
上級船員…125
大工…75
とされています。
企業では、社長の報酬が一般社員の2倍しかない、ということはあまりないでしょう。
また、航海士や船医が重要視されていたこともよくわかります。

●伝説の海賊たち

フランソワ・ロロノア
フランス出身のカリブ海の海賊で残虐非道な海賊として有名でした。

ヘンリー・モーガン
イギリス出身の海賊で、イギリス王室からナイトの称号を得ました。

バーソロミュー・ロバーツ
イギリス出身。
船上での賭博の禁止、夜8時消灯といった厳しい規律で海賊団をまとめました。

エドワード・ティーチ(黒ひげティーチ)
イギリス出身。
カリブ海で悪行の限りを尽くしましたが、イギリス海軍を率いたウッズ・ロジャースに敗れました。

エドワード・ロウ
イギリス出身。拷問を趣味として悪名をとどろかせました。

●まとめ

この記事では割愛しましたが、東洋の海賊についても解説されています。
またカレー船やガレオン船などの海賊船の種類・構造や、カットラス、マスケット銃といった武器の解説もされています。
この記事で海賊に関心を持った方はぜひ読んでみてください。