書評

戦力外捜査官で有名な似鳥鶏さんの「レジまでの推理 本屋さんの名探偵」を読んでみた感想と見どころ!!

戦力外捜査官で有名な似鳥鶏さんの「レジまでの推理 本屋さんの名探偵」を読んでみた感想と見どころ!!

とある本屋さんを舞台に、店長とバイトの青井くんの2人がお客さんの持ち込んだ本にまつわる謎を解決するという物語です。
4つの短編から構成されており、どれもおもしろいのですが、この本を通しての謎を解く、4つ目の短編は特におすすめです。

比較的軽い物語で、ミステリー小説が苦手な人やそもそも本を読むのが苦手だという人にもおすすめできる本です。

また、この本の魅力は謎解きだけではありません。
物語の所々に本屋さんに関する注釈があり、この注釈が非常におもしろく説明されているのと同時に本屋さんの苦労が描かれています。
今回はこの注釈にスポットライトを当てて、特に印象に残った注釈を紹介したいと思います。

シュリンクという言葉を聞いたことありますか?

コミック等にかけてある透明のビニール。
静電気を用いて剥がした人間に吸いつき、作業する書店員の体力と精神力を奪う。

漫画を立ち読みされないようにかけてあるビニールに名前があったことに驚きです。
この本を読まなかったら、一生知らずにいたと思います。

私も購入したあと、自宅で剥がす際にくっついてイラっとくることがありますし、みなさん一度は経験したことのあるのではないでしょうか?
確かにあれは精神的に削られそうで書店員さんの苦労がうかがい知れます。

ポップにはその本の魅力が詰まっている!

本が積まれているところにぴょこんと飛び出ている宣伝カード。
手前の本につけられているこれのせいで奥にある自分の本が見えなくなっている時の悲しさは、体験してみないと分からない。

ポップの説明文に作者の私見が多分に含まれていて、思わず笑ってしまいました。
私も本屋さんで本を見ていると、そもそもポップの近くに置かれている時点で、ポップの付いている本にどうしても目が行ってしまいます。

そして、今思えばその陰に隠れている本を確認したことも私はないです。
自分が書いた本が見えないとなると悲しくなるのはわかる気がします。
きっと作者はその経験があるのだろうなと、不覚にもその場面を想像してしまいました。
ちなみに、この作品に登場する店長はポップを書いた本が必ず売れるという特殊能力の持ち主です(笑)

被害総額年間200億円以上!!

この額は全国書店の総経常利益の二倍にあたる。
つまり、万引きさえなければすべての書店の儲けは三倍になっているということである。万引き犯を見つけたら遠慮なく撲殺しましょう。

この注釈を読んだときは本当に驚きました。
二百億円というとてつもない金額で、万引きがなければ、本屋さんの儲けが三倍になるはずだったという事実に悲しくなります。
これを知ると、著者が「撲殺しましょう」という言葉を使うことも、本屋さんの万引きをする人への怒りの大きさを考えると、わかる気がします。

最後に注釈ではありませんが、私がこの本の中で一番胸に刺さった場面を紹介したいと思います。

「今の客は、本屋で買い物なんかしてくれねえだろうが。文庫も話題の新刊も、みんな図書館で借りちまう。でなければ新古書店に行く。当たり前だよな。そっちの方が安いんだから。~~中略~~それにどうせ品揃えじゃオンライン書店に敵わない。本屋じゃ探してる本を店員に訊かなきゃならない。検索機は正確に書名を入れないと出ない。客注を出しても、取次に在庫がなきゃ二週間かかる。Amazonは翌日に届けてるってのに」

「……価格。商品数。利便性。その三つのことしか考えてないなら、オンライン書店に負けて当然です。でも、そうじゃないでしょう。本屋さんには売り場があるんです。お客様に実際に来店していただけるんです。棚にはずらっと本が並んで、オンライン書店の何十倍、何百倍もの種類の商品がお客様の視界に入る。実物の商品をさっと手にとってもらえる。お客様の購入履歴と全く関係のない本をお薦めすることもできる。目に付いた、それまで興味がなかったはずの本を『読んでみようか』という気にさせることができるのは、図書館と本屋さんだけです。」

これは本屋さんで働く二人のやり取りです。
一人は本屋さんの限界を感じ、もう一人は本屋さんの可能性について熱く語っていてどちらにも共感できる点があり、非常に印象に残りました。

この場面で本屋さんがどれだけ苦境に立たされているのか、再確認することになりました。以前から経営が厳しいということは知っていましたが、確かに価格や商品数、利便性といった点で本屋さんは押されています。

私自身、本が好きでよく本屋さんに行くのですが、本屋さんで感じる不便な点が全部描かれており、そこが書店員の方の悩みの種であることに気づきました。
悩みの種であると同時に、これは店舗を持つ本屋さんの構造上、どうすることもできない点であることは確かで、解決できない悩みほど辛いものはないですよね。

全国の本屋さんのことを考えると、胸が苦しいです。
本をAmazonで注文することもある私としてはこの文章を読んだとき、正直胸にグサッときてしまいました。

しかし、本屋さんにしかない強みは売り場があって実物の商品を見て、手にとれることという点にも共感しました。
確かにオンライン書店などでは、目に入る商品はせいぜい十冊がいいところです。
そしてその十冊について分かることは本のタイトルと著者くらいです。
本屋さんに行けば、その数十倍、数百倍の本が目に入り、タイトルが気になる、表紙が気になるといったことで手にとるきっかけになります。

そこで今まで読んだことのないジャンルや作者の本に出会えるという魅力があります。
また、本屋さんでは書店員が書いたポップがあり、そのポップが非常に興味をそそられるようなものが多いです。
つい立ち止まって手に取ってしまうこともあります。
仮にポップがなくても本には帯がついています。

帯にその本の魅力が短くまとまっているため、それをきっかけにその本を読んでみたくなることが多々あります。
このポップや帯はオンライン書店や図書館にも無いもので、本屋さんの強みであると共に本屋さんに行く楽しみの一つだと思っています。

できないことを悲観するよりも、本屋さんだからこそできることをより魅力的にしていこうという考え方は、どんな場面でも通じるものがあるのではないかと感じました。

まとめ

短編ということもあり、ストーリーに触れるとすぐネタバレになってしまうため、あえてミステリー小説の紹介にも関わらず謎解きには一切触れず、本を紹介させていただきました。

私は謎解きという物語の本筋と独特の注釈がこの本の魅力だと思っています。
謎解きを楽しみながら、私たちの知らない本屋さんの裏側を見ることができるという、まさに一粒で二度おいしいおすすめの本です。

そして、本屋さんの熱い想いが詰まった作品でもあります。
この本を読めばあなたもきっと本屋さんに行ってみたくなること間違いなしです。
似鳥鶏さんの「レジまでの推理 本屋さんの名探偵」ぜひ皆さん読んでみてはいかがでしょうか?