書評

二宮敦人さんの「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」を読んでみた感想と見どころ

二宮敦人さんの「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」を読んでみた感想と見どころ

藝大ってどんなところなのかと疑問を持ったことはありませんか?
一般の人には縁がなく、謎に包まれていますよね!

この本は東京藝大に通う学生たちへのインタビューから、東京藝大がどんな場所なのか、どんな人が通っているのか、知られざる東京藝大の実態が描かれています。
さすが藝大生というべきか、学生と言っても芸術家で学生の皆さんがそれぞれの専門分野への情熱が半端なく、僕では理解できないところも多々ありました。

読めば読むほどおもしろく、次はどんなエピソードを話してくれるのかとページをめくる手を止めることができません。ぜひ皆さん一度読んでみてください。
きっとあなたも途中で読むのがやめられなくなります。

試験問題が予想外すぎる!

「問題一 自分の仮面をつくりなさい」この問題には注釈がついている。
「※総合実技2日目で、各自制作した仮面を装着してもらいます」さらに問題の続きには、「解答用紙に、仮面を装着した時のつぶやきを100字以内で書きなさい」とあり、その隣にまた注釈。「※総合実技2日目で係りの者が読み上げます」

東京藝大で実際に出題された過去問だそうです。
藝大ですから芸術関係の実技はあって当然ではありますが、正直言って、自分の想像を軽く超えていく試験問題でした。
これを唐突に試験当日に問題として出されたら、確実に私は途方に暮れること間違いなしです。
というよりも、大抵の人は作れませんよね…

こんな試験を超えていく藝大生ってすごすぎると思いませんか?
いったいどんな感性をしているのだろうと思いました。
ちなみに、この試験以外にも「人を描きなさい(試験時間2日間)」や「折り紙を好きな形に折ってそれをモチーフに描きなさい」など藝大ならではのおもしろい試験がいくつも紹介されています。

芸術家の感性は常人には測り知れない…

藝大のレベルは総じて高い。
音校なら演奏技術、美校ならデッサン力。
そういった、いわば基礎の部分にまず高い能力が求められる。
だが、それはできて当たり前。
なぜなら努力で何とかなる部分だから。

藝大が求めているのは、それを踏まえたうえでの何か、才能としか表現できない何かを持った学生だ。
「光るものを持っている」と審査する教授に思わせることができないと、合格点は得られないようである。

努力だけでは入ることができず、芸術として何か光るものが必要とはなかなか試験も厳しいですね。
ですが、その才能を見抜く必要がある藝大側も入試というのは大変な仕事なのだろうなと感じました。

そんな試験の例として「自己表現」という試験科目があり、何でもいいから自分をアピールするという試験です。
ちなみにホルンで4コマ漫画をやった人は合格したそうです。
どういうことか意味が分からないですよね。
説明しますと、その人は自分で書いた4コマ漫画のセリフ部分をホルンでセリフっぽく吹いたという話でした。

他にも紙と鉛筆と消しゴムを与えられて、好きなことをしなさいという試験があったそうです。
いかにも芸術性を問われそうな試験ですよね。
どんな絵を描いた人が合格するのだろうと思っていました。
しかし、合格した人は黙々と鉛筆の芯を削り出して、芯を粉々に砕き、顔にくっつけ、最後に、紙を顔に叩きつけ、紙についた黒い跡を自画像と言って提出したそうです。
藝大生になるためには、常人には測り知れない感性が必要なのだなと思いました。

ただ、基礎の部分はできて当たり前、努力で何とかなるからという点は厳しい言葉ですけど、いい言葉だなと思います。
そして、芸術においては光るものですが、基礎の部分に加えて何かを身に着けるもしくは磨くということはどんな業界でも大事なことだと思いました。

指揮者のプレッシャー

「初対面のオーケストラに行く時なんか、もう緊張して……胃が痛いですよ。自己紹介で何を言おうかな、少し冗談を考えておこうかなとか。先生は『百人いたら百人がこちらを好きになってくれることはない。だが百人がこちらを嫌うこともない』って言いますね。そう思って、いつも向かいます」

「百人いたら百人がこちらを好きになってくれることはない。だが百人がこちらを嫌うこともない」が非常にいい言葉だなと思い、印象に残りました。
人間どうしても人の目や他の人にどう思われているのか気になると思います。

そういった対人関係に悩む人の肩の荷が下りる言葉だと感じました。
私自身が人前に立って話をすることが苦手です。
人前に立つと、どう思われているだろうとどうしても不安になるため、この場面には共感できました。

藝大生の進路~芸術の世界はあまりに厳しい~

「半分くらいは行方不明よ」

この本を読み始めたときから、藝大生の進路がどうなっているのか気になっていました。
しかし、まさか半分が行方不明とは思ってもいませんでした。
実際に平成27年度の卒業生486人中225人が「進路未定・他」となっています。

そして4割が進学し、企業に就職するのは一割でした。
藝大出身で活躍している芸術家もいますが、芸術家として食べていけるのはほんの一握りです。
藝大の学長が「何年かに1人、天才が出ればいい。他の人はその天才の礎。ここはそういう大学なんです」という言葉に藝大の厳しさが現れていると思いました。

まとめ

東京藝大がどんな大学でどんな学生が通っているのかが描かれていました。
タイトル通り最後の秘境・カオスな日常という言葉がこの本を表すのにぴったりです。
この本のジャンルは何かと聞かれると、なんて答えようか悩みますが、僕は探検記といってもいいのではないかと思っています。
それほど、藝大は未知の世界でした。

入試や学生生活、そこで働く教授陣など本当におもしろいエピソードが一杯で、ここではほんの一例しか紹介できませんでした。
まだまだ、おもしろいエピソードがあり、藝大のカオスな日常を皆さんにも知ってもらいたいです。
二宮敦人さんの「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」を是非、皆さん一度手に取って読んでみてほしいです。