書評

『自分を好きになろう』を読んでみた感想!気持ちが落ち込んでいる人にオススメの本!

『自分を好きになろう』を読んでみた感想!気持ちが落ち込んでいる人にオススメの本!

「気持ちが落ち込んで、なかなか前向きになれない」ということは、誰にでもありますよね。
そのようなときこの本を開くと、ヒントが見つかるかもしれません。
このタイトルを見ると、「怪しいな…」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。

この本の世界は決して遠い世界の話ではありません。
ほんの小さな挑戦で、著者である岡映里さんがどう変わっていくか、私は何度も目からうろこでした。
岡さんならではのすばらしい文章もぜひ味わってほしいです。

小さなことで人は変われる

翌日、服が到着しました。
それまで着ていたこげ茶色のジャージを脱いで、スカイブルーのスカートと合わせて白いカーディガンを着て、鏡の前に立ってみました。

「おお……! なんか、講演とかしてそうな前向きで元気っぽい人に見える……! 服だけは」
白いカーディガンを着ると、顔色が少しよく見えました。
服を明るい色に変えただけでいきなり元気な人に見えるのです。

明るい色の服に変えてみよう。
おっ、服は元気っぽい。
いやいや自分も元気っぽい!
これだけのことで変わっていけるんだ、ということが、この本を読むとよくわかります。

この本ですすめられていることは、とても簡単なことばかり。
片付けをする、服を変える、笑顔を作るなど、ほとんど手間もお金もかかりません。
小さな取り組みが、うれしい発見に結び付くこのような場面が、この本の読みどころの一つです。
小さなことで人は変われる、ということがよく伝わってきます。

興味の持てるところから読んで試してみる

もし、今、ひとりの部屋で抑うつ状態に苦しんでいる方がいたら、ぜひ、興味が持てるところから読むだけでも読んでみてください。
そしてもし、この本に書かれていることを試してみようと思ってもらえたなら、それは私にとってこの上ない幸せです。

岡さんは以前、重いうつ状態にあり、投薬治療をしていました。
そのように深刻な病気の場合は、もちろん専門医の受診が必要であり、この本を読めば治るということではありません。

ただ、この本に書かれていることで、マイナスになることはあまりないと思います。
あるとすれば、全て読んで全て急いでしなければ、と思い込んでしまうことでしょうか。
しかし、ここにあるように、岡さんが他人に無理強いしているところは全くありません。
あくまで「自分はこれで楽になったよ、気が向けばやってみたら」というスタンスです。
「興味の持てるところから読んで試してみる」というふうに読めば、きっとプラスになると思います。

ズバズバいう語り口

また岡さんは、とても優れた文章の書き手です。
文章が好きな人にとって、いい文章を読むことは最高の薬であり、幸せであるに違いありません。

彼女の文章の良さは、会話の生かし方に特に表れます。
読む人にとって、岡さんが隣にいる人のように感じられます。
次の部分などいかがでしょうか。

「治ってねえんじゃねえの。全然楽しくなさそうじゃん」
「そうですかね」
「そうだよ。そうだ。おめえんち、今、ゴミ屋敷だろ? 今、せんべい布団の周りがコンビニ弁当のカラで山になってるだろ」

図星でした。
「いや、私の家、ベッドなんで、布団じゃないです」
「そこじゃねえよ、ゴミだらけだろって言ってんの」
「ああ、まあそうですね。恥ずかしいですけど」

岡さんは出版社勤務で、過去に東日本大震災の取材をしていました。
この会話は、その取材で出会った会社の社長が、岡さんに電話をかけてきて、片付けのできていない様子を言い当てた時のものです。

この社長がズバズバいう語り口で、度量の大きい、非常に魅力的な人物。
親方と呼ばれています。
そして、その親方が心配して電話してきてくれるような仕事を、岡さんが東北でしてきたということも、この気の置けない会話からはうかがえます。

ぐいぐい読ませてくれる

他にも、中学校からの親友が買ってきてくれたケーキに、紙の皿を用意してたしなめられたことや、世界で活躍しているカメラマンの友人と、言葉の大切さを語りあう場面など、生き生きして、ぐいぐい読ませてくれる場面が満載です。

私が仕事をしていた出版社は割と伝統的な出版物を扱うところでした。
(中略)
自己啓発本を「怪しい」と遠ざける人がとても多かったのです。
(中略)
「今仕事をしている仲間たちが、自己啓発本をバカにしたからといって、自分がこのジャンルの本に助けられた事実は変わらない。逆にコソコソ自己啓発本を読んでいる自分は、助けてもらった多くの本の著者に失礼だな」と感じました。

この本はタイトルだけ見ると、ちょっと「怪しい」と感じる人もいるかもしれません。
岡さんはこの引用のような環境にいました。

ここからの気持ちの転換も非常にダイナミックで、簡単ではなかっただろうなと思います。そしてそれは、そのような過程を経てきたからこその説得力につながります。
敬遠する前に、気楽に本を開いてみてください。
うそ偽りのない、岡さんのストレートな声を聞くことができますよ。

また、このかぎかっこの中の「自己啓発本」や「本」に別の言葉、例えば「会社」や「友人」を当てはめてみるといかがでしょうか。
自分を見直すための、一つの視点になるような気がしませんか。
このような文章と出会えるのも、この本の醍醐味の一つです。

プラス面の言葉を出すことの重要性

わたしっていいな。
とてもいいな。
はあ…
アヤシイ人みたい…
それでもいっか。
声に出しちゃえ
わたしっていいなー

この本は、岡さんと、漫画家の瀧波ユカリさんとの共著で、各章の始めに瀧波さんの漫画があります。
この漫画のやわらかい線が、この本の趣旨にぴったり。
人物の、暗い表情にも明るい表情にも、とても親しみが持てます。

この引用は、その瀧波さんの漫画の部分。
プラス面の言葉を出すことの重要性が示されています。
瀧波さんは、いつも不安を感じる考え方をしがちだったのが、岡さんのアドバイスで変えてこられたとのこと。
岡さんも瀧波さんも、怪しいと思われるかもしれない自分を客観的に見て、そんな自分をそのまま肯定しています。
多くの経験から「それでいい」と肯定する2人の姿勢は、無理がなく、とても素敵だと思います。

またこの本は、他の多くの本との出会いを、生み出してくれる本でもあります。
先に挙げた親方の登場する、岡さん渾身の一冊『境界の町で』をはじめ、瀧波さんの漫画など、いろんな方向へ手を伸ばすきっかけになるかもしれません。
巻末にはおすすめ本を10冊挙げてくれてもいます。

まとめ

「だまされたと思って読んでみて」という言葉は、この本のためにあるような気がします。
この本の魅力について、私が紹介できたのはごく一部です。
気持ちが楽になるのはもちろん、読むこと自体が楽しくてたまらない、とても豊かな読書経験となるでしょう。
一度でも気持ちが落ち込んだことのある、全ての人たちにおすすめします。