書評

MMT 現代貨幣理論とは何か」を読んでみた感想!経済について興味がある人にオススメの本!

MMT 現代貨幣理論とは何か」を読んでみた感想!経済について興味がある人にオススメの本!

日本経済についてどのように思われているでしょうか?
バブル崩壊後「失われた30年」という言葉が様々な場で使われているので、日本は長らく不景気であるというように考える人も少なくないかもしれません。

しかし、不景気って一体どういうことなのという質問がされて、それに明確な答えを言える人はどれぐらいいるでしょうか。
恐らくワイドショーに出ているコメンテーターやニュースを読んでいるアナウンサーでも「不景気」という言葉を正確に理解し説明できるという人はいないでしょう。
いやむしろ、不景気という言葉の定義も実は曖昧な言葉のような気がします。

日本の場合、「失われた30年」という言葉を多くの人が使うので、不景気が長く続いているという人がいると思いますが、では何が「失われた」のでしょうか。
どうやらそれが「不景気」の正体のようにも思います。

日本で「失われた30年」という言葉がさす意味は、正確には「GDP成長率が30年間上昇しなかった」ことを意味します。
これはつまり、一つの家庭が1年間を500万円で生活をしていたとすると、それがずっと変わらず30年続いたということです

1990年当時も500万円、2020年も500万円ということで、家庭の経済規模は一切変化していません。
日本全体を考えると1990年当時もGDP500兆円で、2020年もGDP550兆円程なので、ほとんど規模が大きくなっていないことが分かります。
つまり「不景気の正体」とは「GDP成長が日本では30年間起きなかった」=「日本国民の生活は豊かになっていない」ということなのです。

そこで、この「不景気」といわれる状況からどのように抜け出すのかを全ての経済学者は考えており、2019年から注目をされているのが本著のタイトルにもなっている「MMT(現代貨幣理論)」です。専門用語も多く少し難しいようにも感じますが、本著の内容の紹介をしながら分かりやすく説明をしたいと思います。

ちなみに著者の井上智洋さんは最先端の経済理論や科学技術研究にも注力をされていて若手の研究者として注目をされている人です。是非、覚えておいてください。

①良かった点 「国が借金をしていると言っても、国が返す円というお金自体を国が発行しているわけだから、国がお金を返せなくなるという事態は、発生し得ないわけです。分かりやすく雑な言い方をすれば、国がお金を刷って借金の返済や利払いに充てればよいわけです。」

MMTの説明は専門用語が多くなかなか難しいように思えるかもしれませんが、理解してほしい部分だけ簡単に説明をしたいと思います。

先ず、ワイドショーやニュースでこんな言葉を目にしたことはないでしょうか。
「国の借金は1100兆円」「国民1人当たり800万円の借金がある」「日本は財政破綻する」。
このような言葉は連日テレビでも取り上げられていて多くの日本人は、一度はこの言葉を目にしたり聞いたりしたことがあると思います。

しかし、MMT理論を主張する人たちはこの言葉をすべて否定します。
どういうことかというと、「国の借金は1100兆円」という言い方をする人がいますが正確には「日本政府の借金が1100兆円」というのが正しいです。
これは、この1100兆円借金は国民が返済するものではなく、日本政府が返済する必要があるものということになります。

この違いを理解するのは難しいようにも思いますが、覚えて頂きたいのは「1100兆円を気にするな」ってことです。
将来、国民一人一人に「800万円出してください」と言うことは絶対あり得ません。
この、1100兆円は日本政府が返済義務を負っており、国民には返済する必要はありません。

「でも、そんなこと言っても税金を上げられて返そうとするはず」というのが質問として出てきますが、この「税金」自体をMMT理論を主張する人たちは否定をします。
それはなぜかというと「日本政府の1100兆円の借金は返す必要がない」からです。
多くの人は誤解をしていますが日本政府はいつでもお金を作ることができます。

お金を作ることができるということは、借金はいつでも返済できるということです。
なので、1100兆円の借金なんて気にする必要もないし、わざわざ国民から税金を取らなくても日本政府は借金を返済することができるとういうのがMMT理論の主張です。

②良かった点 「政府の借金は民間の資産」

MMT理論者が指摘する、多くの人が誤解している点の二つ目は「政府の借金が増えることは、悪いことだ」という思い込みです。
日本政府が借金をするということは、そのお金にも「借り手と貸し手」がいます。
日本政府の場合は海外の国からお金を借りているわけではなく、国内の民間銀行からお金を借りています。

つまり、日本政府が借金を増やせば民間銀行はお金を貸している状態になるので、1100兆円は民間銀行の資産という言い方もできるのです(※厳密には50%程度は日本銀行の資産)。

もう少し分かりやすく説明すると、A君とB君のお金の貸し借りを想像してください。
A君はB君から100万円を借りました。
A君にとっては「借金100万円」ですがB君にとっては「100万円の資産」です。
そのため、日本政府の「借金1100兆円」は民間銀行の「1100兆円の試算」ということになるのです。

こうなると、銀行はその1100兆円を担保に企業や個人にお金を貸すことができるようになります。
そうなれば私たち国民もお金がたくさんもらえるという状況が生まれるのです。
そのため、日本政府がどんどん借金を作れば民間銀行は潤い、国民生活も豊かになっていく。
これがMMT理論の二つ目の主張です。

③良かった点 「政府の借金は資本主義にとって不可欠な原動力なのです。実際、多くの主要国で、政府の借金は増大し続けています。」

日本人の多くの人が誤解している点の3つ目が「借金は悪」という考え方です。
もちろん個人における借金は返済期限があり、返済しないと自己破産しなければなりません。しかし、大企業といわれる多くは借金(負債)があり、無借金事業を展開できるのは中小企業までです。

銀行も私たちから借金(預金)をしているからこそ融資や貸し付けができるわけです。
しかし、銀行がすぐに破産するということは誰も思わないはずです。
これは日本政府にも当てはまるもので、日本政府がどれだけ多くの借金をしても自国通貨建て(円での借金)を続ける限りは破産することはあり得ない話なのです。

さらに、自己破産や企業の破産はお金を返せなくなって起こりますが、日本政府の場合は先ほど述べたようにいつでもお金を増やすことができます。
そのため、日本政府が借金をすることは悪いことではなく、むしろ良いことだと考える必要があるのです。

世界ではギリシャが財政破綻をしたため、日本の借金が増えればギリシャみたいになるのではないかといわれますが、それはあり得ません。
ギリシャの場合はEU加盟国であり自分の国でお金を発行することができないから財政破綻したのです。

アメリカ、中国、イギリス、日本の政府の借金は増えていますが、財政破綻は起きないというのは世界の常識です。
それはなぜかといえば、自らの国でお金を作ることができるからです。
このように自らの国でお金を発行できる国は、政府がどんどん借金をして民間企業や国民の生活を豊かにしていくべきだとMMT理論は主張するのです。

まとめ

以上のようにMMTの基本的な考え方を述べてきましたが、興味を持ってもらうことが大切だと思います。失われた30年を抜け出しGDP600兆円を目指すということであれば、今まで通りを方法ではもう10年間日本の「不景気」は続くでしょう。

そこで大切なのが今までの考え方に捉われない、新たな取り組みと正しい経済理論の理解です。
「国の借金が増えること=財政破綻」というレトリックは1960年代に言われ始めたことですが、1990年から日本政府の借金は10倍以上増えていますが財政破綻をしていません。

今回コロナウイルス対策として国が新たに30兆円以上の借金をしますが、それでも財政破綻はしないでしょう。
それはつまり、日本の場合は政府が借金をどれだけ増やしても財政破綻をしない仕組みになっているということです。
是非本著を読んで頂きMMT理論に理解を深めてもらい、新たな考え方を身に付けてもらいたいです。

『MMT 現代貨幣理論』井上智洋著、講談社、2019年