書評

『塩の街』を読んでみた感想!本気の恋を見てみたいという方にオススメの本!

 

『塩の街』を読んでみた感想!本気の恋を見てみたいという方にオススメの本!

みなさん本気の恋してますか?
命をかけても守りたい人はいますか?

今回ご紹介するのは有川浩『塩の街』です。
本作は『図書館戦争』などで有名な有川浩先生のデビュー作になっています。

塩が世界を埋めつくし、人々を塩へと変化させてしまう塩害。
社会の機能が回らない無秩序な世の中で恋をする2人を描いた作品です

また、きゅんきゅんせずにはいられないポイントも多くあります。
同時に恋とはいかなるものなのか真剣に考えたくなります。

有川浩先生のデビュー作気になる…
恋について真剣に考えてみたい!

という方にオススメの一冊です。

【塩害によって崩壊した世の中】

舞台はタイトル通り『塩の街』です。

東京湾の羽田空港沖に巨大な隕石が落下しました。
これを機に塩害が広まり、人々は塩へと変化していき、その数は今なお増え続けていました。

隕石との因果関係は解明されておらず、治療方法も見つかっていません。
1度塩化が始まると手の施しようがないという状態です。
女子高生の真奈はこの日、父と母を失いました。
家にひとり残った真奈でしたが、ある日を境に家から抜け出します。

しかし塩害の広まりによって無秩序になった世の中には、悪事をはたらく者がいるものです。
真奈は見知らぬ男たちに襲われそうになったのです。

そこを助けてくれたのが、真奈よりも10も年上の男・秋庭でした。
真奈いわく秋庭は次のような男でした。

「誰かに優しくするとき、怒るんです。そういう人なんです」

秋庭は身寄りのない真奈を保護し、生活を共にするようになりました。

私はこのシーンを見た時、いかに普段私たちが法に守られているかということを知りました。
法が機能しない世の中で、力のない者は「狩られる側」になってしまいます。
いつも何気なく生活している世界がいかに幸せかということを考えさせられる作品でもあるんです。

【真奈と秋庭が出会った二人】

冒頭で、真奈と秋庭は、遼一という男と、トモヤという男に出会います。

遼一はずっと好きであった海月が塩化したものをリュックに入れて、最期の海を探していました。
最終的に遼一自身も塩化が始まっていることが分かります。

彼女を海に溶かして、自分も海に溶ける。
二人とも同じ濃度の塩の水に――そのために彼はここへ来たのだ。
彼女とひとつに溶け合うために。

秋庭と真奈の恋だけではなく、遼一と海月の恋も描かれますが、こちらはとても切ないです。
一緒に溶けるのが彼らにとっての幸せ。
どうしようもない世の中で消えていくシーンは胸が締め付けられます。

また、トモヤも塩化が始まったひとりでした。
囚人だったのですが、隙を見て逃げてきたのでした。
最期は好きだった女の子のことを想いながら、真奈の膝の上で塩になります。

この本では、恋という一言では表せない「人を想う気持ち」の描写が随所にあります。
ひとりの登場人物ごとに想い方も異なるので、読んでいて毎度恋とは何かと考えてしまうのです。

【入江という人物】

この作品では1番と言っていいほど癖が強く個性的なキャラ・入江。
彼は陸上自衛隊の駐屯地司令です。
かなり偉い地位についている男です。

入江は、元航空自衛隊二等空尉である秋庭に「大規模テロ」という名の対塩害作戦への誘いをします。
その作戦を成功させるためには手段を選ばず、入江は真奈をおとりにするのでした。
入江の性格がよくわかる箇所があります。

僕はね、とてもわがままで身勝手で傲慢な人間なんだ。
自分の望まない状況が天から降ってきたら、どんな手段を使ってでも天に投げ返す。

…自分のことよく分かっているじゃないか…。
思わずそう口に出していました。

ただ、入江を通して、真奈と秋庭はお互いの存在を強く意識しています。
その点では、憎めない男ではあるんですけど…。

作戦は進んでいき、秋庭は命をかけて決行します。

私はこんな世の中で、こんなにも強く人を想うことができるかと今一度考えてみました。

きっと簡単ではありません。
でも、2人の恋はそれが不可能ではないと思わせてくれる頼もしいものでもあるんです。

【2人の恋の行く先は】

秋庭が作戦を実行している間、おとりである真奈は、塩化してもおかしくない空間で待ち続けます。

その空間を出ても良かったのですが、真奈はそこから出ることはありません。

部屋を出ることは秋庭の帰還を疑うことになる。
信じているのなら出る必要はない。
それに、もし戻ってこないとすれば――もっと出る必要はないのだ。
秋庭のいない世界なんてもう要らないから。

真奈の強い決心と、秋庭へのはっきりとした恋の自覚が伝わる箇所です。
2人は最後、無事に抱き合うのでした。

塩がどのようなものであったのか最終的に明らかになることはありません。
もしかしたら、また秩序のない世の中が続いていくのかもしれません。

でも、それすら乗り越えていけるような、強く密接につながった――まるで塩の結晶のように――彼らなら、幸せに逞しく生きていけるのではないかと感じました。

人を想うことの意味について改めて考えさせられる作品です。

【まとめ】

今回は有川浩『塩の街』をご紹介しました。
真奈も秋庭もしっかりしているのに、恋に関しては不器用なところが多く、見ていてドキドキします。
最終的には繋がれてよかったです。

舞台も塩害の世の中という珍しいケースなので、世界観だけでも新鮮で興味深い作品です。

2人の恋が気になる!
世界観を自分の目で確かめてみたい!

という方はぜひ読んでみてくださいね。