『星のかけら』を読んでみた感想!小学生の頃を思い出したい人にオススメの本!
持っているだけで、どんなにつらいことがあっても耐えられるという「星のかけら」があったら…。
今回ご紹介するのは、重松清『星のかけら』です。
小学6年生の子供たちが、星のかけらを通して、生きることや死ぬことについて考えていくストーリーになっています。
私が小学生の頃に生死を実感したのは、ペットのウサギが死んでしまったときです。
たくさん泣いた後、子供ながらに生死について考えていました。
生きること死ぬことについて今一度考えてみたい!
読みやすい小説ないかな?
という方におすすめの一冊です。
【星のかけらとは】
持っていればどんなつらいことも耐えられる「星のかけら」のうわさをユウキに教えてくれたのは、同じ塾に通うマサヤでした。
星のかけらと聞くと壮大なものを思い浮かべてしまいますが、実は正体は車のフロントガラスの破片なのです。
ただ、交通事故が起きた車じゃないとだめだとか、人が死んだらだめだとか…といった具合に、条件は話す人によって異なっていました。
毎日学校でも塾でもいじめられているユウキは、半信半疑ながら星のかけらに興味を持ちます。
ある日の塾帰り、ユウキとマサヤは星のかけらを探しにいきます。
『魔の交差点』と呼ばれる事故多発の場所に着くと、見知らぬ女の子が現れます。
彼女はフミという名前で、星のかけらの落ちている場所を二人に教えてくれました。
しかし気づいたときにフミは消えてしまうのでした。
幽霊を見たときのような恐怖感はありませんでした。
フミの言葉はどこかあどけなさの残る優しいものなんです。
「ユウキくんって、怖がりで、臆病?」「…わりと」「ごめんね、わたし、ときどきおせっかいになっちゃって」「はあ?」「ほんとうはずーっとあっちにいなくちゃいけないんだけど」あっち――のところで、フミちゃんは夜空を指差した。
ユウキを気にかける優しさや、空を見上げるシーンは少し切ないですね。
このフミという女の子が星のかけらに大きく関わってくるのです。
【生きることと死ぬこと】
フミは6年前に起きた交通事故の被害者でした。
星のかけらを光にかざすと、フミとその家族の様子が映像のように立ち上がるのです。
ユウキやマサヤ、そして正義感の強いエリカたちはフミについて調べていきます。
そののち、マサヤの兄・タカヒロとフミが同級生であることが判明するのでした。
タカヒロはフミの死が悲しかったことをきっかけに、学校に行けなくなっていました。
フミとタカヒロは仲良しで、交通事故の日も一緒に遊んでいました。
しかし別れ際に、いつもの調子で「おまえなんか死んじゃえ」と言ってしまったのです。
タカヒロはフミの死が自分のせいであると、ずっと後悔してきたのでした。
フミがタカヒロの前に姿を現さなかったシーンで、フミは次のように言います。
「生きてるひとは、みんな、自分の力で歩いていかないと、だめなの」
生きている人は、死んだ人にずっと縛られずに、ひとりで生きていかなければならない、というメッセージです。
フミは幼いながらも生死について人一倍考えていると私は思いました。
アキラたちはこの行為に疑問を抱くものの、次第に生死に関して思いを巡らせていくのでした。
ユウキの友達のエリカは、生きることについて次のように考えています。
わたしとかユウキとか、よく十二歳まで生きてきたなあって思わない?
わたしたちだって死んじゃうかもしれないタイミングはたくさんあって、でも、うまい具合にそこにぶつからずに生きてて…〈略〉
そういうこと考えたら、生きてるって、なんかすごいことだと思うわけ
難しい言葉ではありません。
しかし一生懸命に考えを広げているのが伝わってくる台詞です。
だからタカヒロも、フミを想うのであれば、悔やむのではなくしっかりと生きていかないといけないとエリカは付け足しています。
私はこんな風に生死について考えたことがあっただろうかと思いました。
子供たちの問いは、知らず知らずのうちに読者である私たちまでも射止めていきます。
【ユウキの成長】
最初は、言葉の前に「とりあえず」など何かしらのクッションを置いてばかりだったユウキ。
いじめられたときも抵抗しないでこのまま我慢すればいい、と考えていました。
しかし星のかけらを通して生死について考えていくうちに、ユウキは変わっていきます。
いじめっ子のヤノから喧嘩をけしかけられたときのシーンです。
でも、今日は、逃げるのは嫌だ。
生きているって、なんか、すごいことだと思う――。
エリカの言葉が、不意によみがえった。
さっきはピンと来なかったのに、いまは、胸の奥で、ぼくの心をグッと支えてくれているのがわかる。
ユウキの心の成長がはっきりと分かる箇所です。
私はユウキと境遇が似ていたゆえ、なおさらここではガッツポーズをしてしまいましたよ。
親のように温かく見守らずにはいられません。
【みんなでさがす星のかけら】
タカヒロが父と喧嘩した際に、星のかけらはマサヤの家の外へと放られてしまいました。
それを探すために、ユウキ、マサヤ、エリカ、タカヒロ、いじめっ子だったヤノ、フミの母であるミチコが集まります。
みんなで星のかけらを探すシーンは、それぞれが必死で胸がつまります。
きっとみんなが最初の状態のままだったら、こんな場面は成立しなかったでしょう。
ひとりひとりが成長したゆえに、この場面があるのだと思います。
星のかけらを発見したときのシーンはあたたかく、少し切ないです。
ミチコさんは何度か深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、そっと星のかけらをつまみ上げて、夜空に掲げた。
その瞬間、まるで真昼の太陽のようにまぶしい光が、ぼくたちに降りそそぐ。
光の中に、フミちゃんがいた。笑顔だった。
子供たちだけでなく、最後は大人であるミチコの成長も見られます。
【まとめ】
今回は重松清『星のかけら』をご紹介しました。
自分の小学生時代を振り返りながら読んでいました。
星のかけらを持っていればつらいことに耐えられる、とありますが、今のユウキたちならそれがなくてもつらいことを乗り越えられるのではないでしょうか。
生死というテーマですが重くなりすぎず、また文章も読みやすいです。
小学生の頃自分はどんなことを考えていたかな?
重松清先生の作品どれか読んでみたい…
という方はぜひ読んでみてくださいね。