書評

『ふちなしのかがみ』を読んでみた感想!怪談が好きな方にオススメの本!

『ふちなしのかがみ』を読んでみた感想!怪談が好きな方にオススメの本!

今回ご紹介するのは、辻村深月先生の『ふちなしのかがみ』です。

怪談話がつづられている短編集です。
辻村先生というとファンタジーのイメージが強いのですが、今回の怪談話は怖いかつ設定が練られていてとても読みごたえがありました。
ホラーも書ける方なのだなと気づいた作品でもあります。

ちょっと怖い話を読んでみたい…
都市伝説に興味がある!

という方におすすめの一冊です。

【鏡にまつわる都市伝説】

みなさん、合わせ鏡って知っていますか?
その名の通り、鏡を2枚向い合せることです。
私が小学生の頃は、合わせ鏡の中に連なった自分の顔を奥まで見てみると、どこかに自分が死んだときの顔が出てくる、といううわさ話がありました。

それ以来鏡を見ることに少しためらいがあります…。
鏡ってどこか不思議な力を持っているような気がするんですよね。

今回の『ふちなしのかがみ』もタイトル通り、鏡にまつわる怖い話なんです。
震えながら読み始めました…。

この作品で出てくる鏡の都市伝説は次のようなものです。

自分の年の数だけ、ろうそくを用意するの。〈略〉
でも色は赤って決まってる。それを鏡に全部映るように並べて、火をつけるんだって。
その状態で鏡を背に立つ。
そうして、午前零時に振り返ると、炎の向こうに自分の未来が映ってるんだって

この都市伝説を知った香奈子は、実践することを決めます。
というのも、最近通い始めたクラブでサックスの演奏をしている男子高校生・高幡冬也に惹かれていて、彼との未来を見てみたいと感じたのです。

実際にやってみると、なんと一瞬だけ女の子が鏡に映りこんだのです。

この時点で私はすでに怖かったのですが、それに反して香奈子は、自分と冬也の未来の子だと確信し興奮します。
容姿も、冬也と自分に似ているのです。

映った女の子は本当に未来の子供なのでしょうか?
疑問を抱きつつ話は進んでいきます。

【高幡冬也という人物】

香奈子は知り合いのサキやマイコづてに、冬也が有名な作曲家・高幡ユウイチロウの愛人の子であると知ります。
ユウイチロウには本妻と子供もいるのですが、結婚前後から愛人との関係はずっと続いていたのでした。

それを聞き、ますます香奈子は孤独な冬也を助けてあげたい、ともに生きたいと思いを募らせていきました。

しかし、思いは届かず、冬也は小宮麻里という同級生の女の子と付き合っていることが分かります。
それ以来香奈子は、夢の中で、音楽の才能がない自分の未来の子供を叱るようになりました。

香奈子は自分の未来がうまくいかないことに気づき、次第におかしくなっていきます。
悪い夢ばかり見てしまい、頭痛や両手の震えに苦しむのです。

ある日、鏡の中に未来の子供が映りますが、彼女は今にも泣きだしそうな顔をしていました。

また、時を同じくして、現実世界でも、夜遅くに女の子が外に出ているという目撃情報が広がっていきます。

香奈子は自分たちの未来の崩壊が進んでいることを察知するものの、ひたすらに冬也を想います。

彼の姿を見るのもつらいのに。
冬也くん、私ならあなたを理解できる。
あなたを幸せにしてあげたい。けれど、泣いても仕方がない。
この未来は確実にやって来るのだろう。冬也くん、冬也くん、冬也くん、冬也…。

香奈子がだんだん狂っていく様には鳥肌が立ちます。
そして謎が明らかになっていくのです。

【香奈子という女】

冬也はある日、玄関のドアの前で見知らぬ女の子を見つけます。
その子はワンピースを着て、死んでいたのです。
首下には絞められたような一筋の線がありました。

その後冬也は、父のユウイチロウに会い、本妻とはもう別居していることを告げます。

謎の少女の死。鏡の前に映る少女。
本妻とは別居している、と言うユウイチロウ。

なんとなく気づいた人もいるでしょう。
一貫して明かされてこなかった香奈子の苗字は「高幡」。
香奈子はユウイチロウの本妻であろうことがここで分かります。

そして鏡に映っていた子は、冬也との未来の子供などではなく、
ユウイチロウと香奈子の間の子供・優香だったのです。

冬也と香奈子に似ている点もこれで合点がいきます。

サキが、鏡の都市伝説をためした女の子の経験談を述べている箇所があります。

鏡の中と現実のキョウカイがね、だんだん曖昧になってきちゃったんだって。
そう言ってた。普通に鏡を見てる時でも、そこに映ってる自分は血だらけなんだって。
そのうち、鏡の中の『未来の自分』が、こっちの自分に血まみれの手を伸ばしてくるようになったって言ってた。

最初は自分の未来が見られるって楽しそう!
と考えていたのですが、やはり鏡は恐ろしいものでした・・・。

香奈子は現実と未来(鏡の中)との境界があやふやになってしまったのです。
音楽の才能がある冬也を求めながらも、実は、自分を選ばなかったユウイチロウを求めていたのでした。

この話の面白いところは、異常な力がはたらいているわけではないという点です。

鏡に映った優香は現実にいる子供なのに、鏡の儀式をした際に映りこんだゆえ、冬也との未来の子であると錯覚してしまうのです。

鏡がきっかけではあるけれども、怪談ではなく、何よりも「人が怖い」話でしょう。
都市伝説を生半可な気持ちで試してはいけないと強く感じるお話です。

ラストまでの「そうだったのか」という発見まで巧みに描かれ、伏線もところどころに張られています。
謎解きをしながら読み進めていける怪談集です。

【まとめ】

今回は辻村深月『ふちなしのかがみ』をご紹介しました。
表題作以外にも、現代の怪談話が掲載されているのであわせて読んでみてくださいね。
当分私は鏡を見られなさそうです。
少なくとも深夜には見たくないです…。

怪談話が好き!
謎解きしながら楽しめる本ないかな?

という方はぜひ読んでみてくださいね。